ガサラキ 公式Web
SPECIAL 特集

 脚本を書くのも初めてならシリーズ構成ももちろん初めて。ガサラキは僕にとって何もかもが初めての作品でした。
 本当に、今にして思うと、無謀と言うか無茶苦茶と言うか。兎に角、こと脚本に関して言えば全く何の経験も無い人間に主要な役どころの一つを担わせようと言うのですから。ところが、高橋監督の度量はそんな些事に拘泥する程小さくはなかったんですよね。それどころか、逆に経験が無い部分を独自の表現を生み出す原動力に変えてしまおうとするくらいで。制作を進めて行く中、監督の推進力にどれ程驚かされた事か。今でも、果たして監督の意欲の何分の一かでも実現出来たかどうか、思い返す度に冷や汗をかかずにはいられません。
 何れにしても、様々な人達と侃々諤々意見を交しながら作って行く事が出来たという意味で、この作品は自分にとって貴重な体験となりました。本当にアニメーションは総合力ですよね。アニメーションの枠に囚われない谷口さんの映像表現力や浦上さんの斬新な音作りを始めとして、正に数多くのスタッフの様々な個性が渾然一体となって初めてこのガサラキという作品は出来上がっているのです。もちろん、声の表現も同様です。これはアフレコの時に痛烈に感じた事なのですが、キャストの皆さんの演技が後半に向かって大きく変化しているのです。例えば第22話の桧山さん。あの声を押し殺す事で実現されたユウシロウの切実な感情の表現は、ブース越しに聞きながらもゾクッとしたのを覚えています。それは、もしかしたら自分は今までアニメーションが持っているトータルの可能性の極一部にしか目を向けていなかったのではないか、多くのスタッフが力を合わせて作る事の本当の素晴らしさはまだまだ未開拓なのではないかと気付かせてくれた瞬間でもありました。

野崎 透 

このスタッフメッセージは2004年のDVD-BOX発売時に収録されたものです。

1961年北海道出身。アニメ雑誌編集者をつとめた後、スペシャルコンセプターとして『勇者王ガオガイガー』に参加。『ガサラキ』では脚本、シリーズ構成の他、小説、CDドラマと多岐に渡って活躍する。主な参加作品として『ベターマン』『ウィッチハンターロビン』他。
スニーカー文庫『ガサラキ』シリーズ
原案:矢立 肇・高橋 良輔
著:野崎 透
カバーイラスト:村瀬 修功



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